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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)9423号 判決 1957年4月18日

原告 湯沢照吉

右代理人弁護士 佐藤茂

被告 城北運輸株式会社

右代表者 小松富二郎

被告 不二山晃司

<外四名>

右六名代理人弁護士 時田至

主文

一、被告等は合同して原告に対し金六百万円及びこれに対する昭和三〇年一二月二日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

本判決は原告において金百万円を担保に供するときは確定前に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

被告会社が原告に対し、原告主張のような事項記載の約束手形を振り出し、これが満期の翌日に支払場所に呈示されたが支払を拒絶されたことは当事者間に争がない。

成立について争のない甲第一号証の一によれば、本件約束手形の表面の振出人である被告会社の記名捺印に並んで、被告会社の契印のなされた補箋に、被告不二山晃司、同森源吉、同小松富二郎、同遠藤憲、同緒方惟行の署名捺印のあることが認められるが、右被告等の署名捺印が保証の為のものであるか振出の為になされたものかにつき争があるので、この点について先ず判断する。被告遠藤及び小松各本人尋問の結果によれば同被告等が被告会社と共同で本件約束手形を振り出す為に署名をなした事実は認められず、却つて右各供述(但し後述認定に反する部分は採用しない)及び原告本人尋問の結果を綜合すると、原告は被告会社に対する貸金債権につき被告会社の役員である被告不二山、同森、同小松、同遠藤、同緒方の個人保証を被告等に要請し、その結果被告会社が右貸金債務支払の為に原告に振り出した約束手形には従来もこれら被告が署名捺印をしていた事実が認められるので、右被告等の署名捺印は手形保証の為に為されたものと判断する。

次に前記のような手形の表面の補箋に保証の為にする旨の表示のない単なる署名捺印が手形保証として有効であるかどうかについて按ずるに、手形法第七七条第三項、第三一条第一、三項によれば保証は手形の補箋に為すことが認められており、補箋は手形と一体をなしてその一部となるものであるから、手形の表面の補箋は手形の表面と一体をなすもので、かかる補箋に為された単なる署名捺印は手形の表面になされた単なる署名捺印と同様保証とみなされると解する。なお、前記甲第一号証によれば、前記被告等の署名捺印のある紙片が補箋として有効に本件手形に結合されていることを認めることができる。

よつて被告会社は本件手形の振出人としてその他の被告はその保証人として原告に対し本件約束手形金六百万円及びこれに対する呈示の翌日である昭和三〇年一二月二日以降完済に至るまで年六分の手形法所定の利息を支払う義務があるから、原告の右請求は正当としてこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 三淵嘉子)

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